猫、犬、ヒトに噛まれた際の感染症は、原因となる菌の種類や傷の深さが異なるため、リスクや処置の優先順位が変わります。

特に「猫」と「ヒト」による咬傷(こうしょう)は、見た目以上に感染リスクが高いため注意が必要です。それぞれの違いを分かりやすく解説します。


1. 種類別:感染率と特徴の比較

動物の種類によって、傷の形や菌の入り方が異なります。

項目 猫(ネコ) 犬(イヌ) ヒト
感染発生率 30〜50%(非常に高い) 5〜20%(比較的低い) 15〜30%(部位により高い)
傷の形状

穿刺創(せんしそう)


牙が細く深く刺さり、奥で菌が繁殖。

挫滅創(ざめつそう)


組織を押しつぶすため損傷は大きい。

複雑な損傷


「握り拳での殴打」による傷は最悪。

主な原因菌

Pasteurella属 (パスツレラ)


※24時間以内に急激に腫れる。

Pasteurella属、Capnocytophaga属など Eikenella corrodens、ブドウ球菌、連鎖球菌など
特有のリスク

関節や腱にまで菌が届き、


化膿性関節炎になりやすい。

免疫不全者での重症敗血症


(カプノサイトファーガ)

肝炎、HIVなどの血液媒介感染症、


口腔内細菌による重度の化膿。


2. 治療薬(抗菌薬)の違い

幸いなことに、猫・犬・ヒトのいずれの場合も、第一選択となる抗菌薬(飲み薬)は共通しています。

  • 第一選択薬:アモキシシリン・クラブラン酸(商品名:オーグメンチン®など)

    • 理由:咬傷感染は複数の菌(好気性菌と嫌気性菌)が混ざった混合感染であることが多いため、これらを幅広くカバーできるこの薬が最も有効です。

  • ペニシリンアレルギーがある場合

    • クリンダマイシン + ニューキノロン系(シプロフロキサシンなど)

    • ドキシサイクリン

      など、医師が状況に合わせて組み合わせを決定します。


3. なぜ「猫」と「ヒト」は怖いのか?

猫:天然の注射針

猫の歯は鋭く、注射針のように深部へ菌を送り込みます。皮膚表面の傷口はすぐに塞がってしまいますが、「出口のない深部」で菌が増殖するため、重篤な感染(骨髄炎や化膿性腱鞘炎)を起こしやすいのが特徴です。

ヒト:口の中は「菌の巣窟」

人間の口内細菌は非常に種類が多く、特に「相手の歯に拳が当たってできた傷」は、指の関節内に直接菌を塗り込む形になるため、外科的な洗浄手術が必要になるほど悪化することがあります。


4. 共通して行うべき3つのステップ

万が一噛まれてしまったら、以下の手順をすぐに行ってください。

  1.   流水での徹底洗浄(5分以上)

    • 水道水で、傷の奥まで洗い流すイメージでしっかり洗います。消毒液よりも「物理的に菌を減らす」ことが重要です。

  2.   原則として「縫わない」

    • 咬傷は菌を中に閉じ込めてしまうのを防ぐため、医師もすぐには縫合(縫うこと)せず、開放したまま治療することが多いです。

  3.   破傷風ワクチンの確認

    • 土壌などにいる破傷風菌のリスクがあるため、前回のワクチン接種から時間が経っている場合は追加接種を検討します。


まとめ:

「犬に噛まれた」ときは傷の大きさに驚きますが、「猫やヒトに噛まれた」ときは見た目が小さくても中が化膿しやすいため、より警戒が必要です。翌朝に腫れや痛みが強くなる前に、早めに医療機関(外科・整形外科・皮膚科など)を受診してください。